トライアイズ監査役解任議案を撤回

大証ヘラクレス上場でソフト開発のトライアイズは24日、定時株主総会に提出した古川孝宏監査役の解任議案を取り下げると発表した。解任手続きに不備があるなどとして、古川監査役は東京地裁に議案提出の差し止めを求める仮処分を申請していた。トライアイズ側は「手続きに不備はないが、混乱を避けるべきだと考え議案を取り下げた」と説明している。株主総会は25日に開かれる。
(日本経済新聞2009年3月25日 14面)

【CFOならこう読む】

本件3月17日に取り上げました。

「トライアイズ解任議案の差し止め請求」

今日はその続報です。

会社は解任議案取り下げの理由を次のように説明しています。

当社としましては、当該議案の対象とされた監査役の解任の是非を株主の皆様にご判断いただきたいと考えておりましたが、平成21年3月17日に公表しました仮処分命令申立事件をもって、同監査役から、解任に関する意見の掲載がなされていないとの指摘を受けました。当社としては、当該事件における審尋手続において、初めて同監査役から意見を申し述べられたと認識し、平成21年3月19日に開示しましたとおり、同氏の意見と判断される事項を直ちに開示することで対応しましたので、当社に手続的な不備はないと認識しておりますが、同監査役から法定期間である2週間に不足するとして異議を述べられております。

当社としましては、監査役の解任という重要議案に関しては、無用な疑義を差し挟まれることなく、株主の皆様にご判断いただきたいと考えており、また、上記の状況において仮に株主の皆様にご賛同いただいたとしても、後日、当該決議に係る手続その他の事項についての争いとなる可能性が高いと判断されます。そのため、当社としましては、これ以上の混乱を避けるべきであると考え、真に不本意ながら、また、株主の皆様にはご迷惑をおかけすることになり恐縮ですが、かかる議案については、今回の定時株主総会でのご審議を取り下げさせていただき、皆様にご納得いただける形をもって、改めてご判断を仰がせていただきたいと考えております。

監査役は、同人を選任した株主総会の特別決議により解任され得る(会社法339条1項、309条2項7号)のですが、その場合監査役に意見陳述権があります(会社法345条4項)。
そして監査役に意見がある場合、その意見の内容の概要を株主総会参考書類に記載しなければなりません(会社法施行規則80条3項)。

ところが会社は監査役の意見がないものとして、この記載を行っていませんでした。

会社法は、意見陳述権が認めること及び解任決議の要件が特別決議であることにより監査役の地位の強化を図っています。解任の場合に、解任に関する意見がない、ということは通常考えられず、会社の説明には無理があると私は思います。

なお、意見陳述権は辞任の場合にも認められていますのでご留意ください。

【リンク】

平成21年3月5日「第14回定時株主総会招集ご通知」株式会社トライアイズ