コジマ、ビックカメラ傘下入り

ビックカメラは11日、コジマを買収すると正式発表した。
(日本経済新聞2012年5月12日3面)

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「ビックは6月、コジマの第三者割当増資を引き受け、株式の50.06%を1417億円で取得。合計売上高は1兆円弱でヤマダに次ぐ2位となる」(前掲紙)

本件第三者割当に関する取締役会決議日の直前営業日(平成 24 年5月 10 日)の株式会社東京証券取引所における終値である 362 円をもって発行価額としています。

日本証券業協会「第三者割当増資の取扱いに関する指針」(平成 22 年 4 月 1 日付)によれば、第三 者割当により株式の発行を行う場合には、その払込価額は、原則として、株式の発行に係る取締役会決議の直前日の価額を基準として決定することとされています。

しかし、取締役会決議日の直前営業日から1ヵ月間さかのぼった平均387円に対して6.47%のディスカウント、3ヵ月間さかのぼった平均455円に対しては20.43%のディスカウント、6ヵ月間さかのぼった平均480円に対しては24.63%のディスカウントとなっており、有利発行ではないかとの疑念が生じる可能性もあります。

この点について、会社は、次のように説明しています。

「当社は、平成 24 年3月 30 日に株式会社東京証券取引所において平成 24 年3月 期通期業績予想を大幅に下方修正する旨の公表を行ったため、その後市場で形成された株価の方が当社の 直近の財政状態及び経営成績を公正に反映しているとの考慮に基づき、この発行価額は割当予定先にとっ て特に有利なものではないと判断いたしました。」

もうひとつ、本件第三者割当は、

1.希釈化率が 25%以上であること、
2.支配株主の異動を伴うものであることから、

株式会社東京証券取引所の定める有価証券上場規程第 432 条に規定される独立第三者からの意見入手 又は株主の意思確認手続きを必要とします。

有価証券上場規程第 432 条は、希釈化率が25%以上となるとき又は支配株主が異動するとき、以下のa又はbの手続きを経ることが要求しています(規程第432条、施行規則第435条の2)。

a. 経営陣から一定程度独立した者(第三者委員会、社外取締役、社外監査役等)による第三者割当の必要性及び相当性に関する意見の入手(実務上、取締役会決議日までに意見を入手することが求められる)
b. 株主総会の決議など(勧告的決議を含む)の株主の意思確認
(実務上、払込期日までに意思確認を実施することが求められる)

コジマは本件第三者割当増資について、第三者委員会よりその必要性及び相当性について、以下の内容の意見を入手しています。

◯必要性について
1.当社は、不採算店舗の閉 鎖を抜本的な収益改善を図るための喫緊の経営戦略の一つとして認識し、これに取り組んでいたところ であるが、これは、客観的にも当社の経営上克服すべき最重要課題の一つであったと認められるほか、 競争の激化に備え、新規店舗の出店及び既存店舗の改装が不可欠であることも認められる。
2.不採算店 舗の閉鎖並びにこれを補完するために首都圏及び東日本において集中展開する新規店舗の出店及び既 存店舗の改装に係る具体的な事業計画(以下「本事業計画」という。)は、当社のみならず割当予定先 の厳しい評価も経ていることから、その内容は合理的かつ相当なものであると認められる。
3.本事業計 画の実施におよそ 141 億円の資金を必要とするとの当社の試算は十分に合理的な裏付けを有するものと 認められる。
4.当社の直近の経営成績及び財務状況に加え、当社を取り巻く諸々の外部環境を勘案すれ ば、金融機関からの借入れ、社債の発行、公募増資等といった本件第三者割当以外の資金調達方法は、 本事業計画を実施するための方法としてはいずれも実現可能性に乏しいものと認められる。
以上の理由により、本件第三者割当の必要性については、十分に合理的な 裏付けをもって肯定できる。

◯相当性について
次に掲げる理由により、会社法上 の有利発行規制及び不公正発行規制に抵触しない適法なものであり、株式会社東京証券取引所の定める 有価証券上場規程第 435 条の趣旨とりわけ既存株主の株主価値の希釈化への配慮という観点に照らして も合理的かつ相当なものであると考えられる。

1.当社においては、外 部コンサルタント会社に委嘱して競合他社とのアライアンスのシミュレーション(財務体質、事業競争 力、経営構造等の要因別評価に基づき、各社との競合指標を導出するシミュレーション)を実施したり、 他業界の企業数社に対してもアライアンスの可能性について検討したりする等の方法により、真摯にア ライアンス先の選定に取り組んでいた事実が認められる。当社は、平成 21 年3月以降、割当予定先と の間で、断続的ではあるが、具体的なアライアンス条件についての交渉を積み重ねることとなったので あるから、割当予定先の選定に至る検討過程は、合理的かつ相当なものであると認められる。
2.当社と 割当予定先との間の交渉経緯は、対等の立場での誠実なものであったと認められる。
3.本件第三者割当 における発行価格は、会社法に照らして適法であるとともに、既存株主の株式価値の希釈化への配慮と いう観点からも相当であると認められる。
4.本件第三者割当は、会社法上の不公正発行規制に抵触する ことなく適法であるとともに、議決権の希釈化及び発行権限の濫用という観点からも相当であると認め られる。
5.本事業計画の実行のために必要な資金の額はおよそ 141 億円であると見込まれることから、 本件第三者割当による調達資金額とその資金使途とは整合性がとれていると認められる。
6.割当予定先 は優良な企業であるとともに、本件第三者割当に伴う親子会社関係の形成によって、支配株主たるビッ クカメラが当社の既存株主の利益を損なうような支配権の行使をしたり、あるいは不当な取引を当社に 強要したりする素地は生じていないと認められる。
7.割当予定先であるビックカメラは、平成 24 年5 月9日現在、本件第三者割当に係る払込金額である 14,118,000,000 円を超える預金を保有していると 認められる。
8.本件第三者割当により実現する当社とビックカメラの間のアライアンスは高い蓋然性で 当社の企業価値を増加させるものと見込まれること、当社はビックカメラとの交渉において募集株式の 発行価格の引き上げを念頭に置いて対等かつ誠実な交渉を行っていることが認められることから、既存 株主の株主価値の希釈化への配慮がなされているものと認められる。
9.本件第三者割当は当社の既存株 主にとって実現可能な経営戦略の選択肢の中で最善のものであると認められ、議決権の希釈化及び発行 権限の濫用という点は本件第三者割当においては問題とはならないと認められる。

【リンク】

2012年5月11日「資本業務提携、第三者割当による新株式発行並びに主要株主である筆頭株主及び親会社の異動に関するお知らせ」株式会社コジマ [PDF]