日本プライベート・エクイティ協会、官製ファンドの肥大化を防ぐための提言

「いたずらに財政負担を生じせしめ、国民負担を招く危険性がある」米コールバーグ・グラビス・ロバーツ(KKR)、国内独立系のアドバンテッジパートナーズなど国内外の主要買収ファンドで作る民間団体、日本プライベート・エクイティ協会が3月に出した声明は、M&A業界関係者の間で波紋を呼んだ。直接の名指しを避けているものの、産業革新機構の投資活動を強く意識したものであることは、関係者の誰が見ても明らかだった。
(日経ヴェリタス2013年4月7日51ページ)

【CFOならこう読む】

日本プライベート・エクイティ協会が3月8日付で出した、「我が国経済の本格的再生に向けた 民間投資資金の積極的活用に関する提言」は次のように述べています。

「市場メカニズムが正常に機能している場面において、政府及び関係諸 機関が、成長分野を自ら探し出し成長資金を直接投じ、あるいは問題を抱えた企業に対 する出資を直接行って支援するのは、民間との正常な役割分担を超える危険性があるも のと考えます。政府及び関係諸機関による経済復興政策は、本来的には制度設計や規制 整備による市場機能の正常化・活性化にあるべきであり、それを超えて、政策金融によ る投融資が行われ、あるいは官製ファンドによる出資が行われるのは、あくまで市場に おけるリスクマネーの供給が機能不全に陥っており、市場機能に委ねているだけでは市 場メカニズムが正常に働かず、公的な支援がない場合に比して社会的コストが膨大にな ると判断される場合に限定されるべきものと考えます。」(前掲紙)

至極もっともです。
私も当ブログで同様の主張を何度も行っています。

2013年2月27日「エルピーダメモリの更正計画案認可へ」

2013年2月21日「ファンド、米でM&A活況」

2012年10月19日「JAL株、外国人買いで回復」

2012年9月25日「ルネサス、官民で買収」

2012年8月29日「KKR、ルネサスの経営権取得へ」

2012年2月8日「半導体3社、事業統合交渉」

2009年6月30日「エルピーダ、公的支援本日決定」

官製ファンドへのニーズが何故あるのか?
突き詰めていくと、日本企業(日本人)の持つ根拠のない外資又は外資的なものへの畏怖にぶち当たるように思います。

有力なプライベート・エクイティ・ファンドの多くは、米国のファンドです。また国内系のファンドであっても、その手法は米国のファンドと大きな違いはありません。日本企業の多くはこういったファンドの出資を仰ぐことに抵抗があるのです。

今日の記事で冨山和彦氏が、外資を活用する手があるか、という質問に対し、次のように答えています。

「1つの方法ではある。だが彼らは投資リスクに加え為替リスクを負担するため、高いリターンを求める。企業再生ファンドは本来、極めてローカル色が強い。(事業の内容を)肌感覚で理解できない外資が手掛けると(サーベラスが要求したと西武ホールディングスが主張しているような)やれ球団を売れ、鉄道を売れという空理空論になりがちだ」(前掲紙)

私は正直冨山氏が何を言っているのか理解できません。
だって、すべての企業がローカル色が強いじゃないですか?
再生ファンドを活用すべき場面は、まさにそのローカル色だけでは立ち行かなくなったときでしょう。

こんな理屈で外資を拒絶していたら、日本にヒト、モノ、カネが集まってくるなんてことは未来永劫ありませんね。

【リンク】

2013年3月8日「我が国経済の本格的再生に向けた民間投資資金の積極的活用に関する提言」一般社団法人 日本プライベート・エクイティ協会 [PDF]