TBS・楽天 公正な価格とは

楽天、TBS全株売却 提携断念、3年半の攻防決着へ

楽天は31日、発行済み株式の19%強を保有するTBS株について、すべて買い取るようTBSに請求したと発表した。TBSは4月1日に特定株主による株式大量保有を制限する「認定持ち株会社」に移行する。楽天はかねて求めていた経営統合や事業提携が難しくなったため、保有株を売却する。TBSは請求に応じる義務があり、約3年半にわたる両社の攻防は楽天が引く形で決着に向かう。
(NIKKEI NET 3月31日

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今朝の両社の株価は、このニュースを受け堅調に推移しているようです。

株式売却については、08年12月に売却を検討していると一部で報道された経緯がある。すでに株式評価損を08年12月期に計上していることもあり、今回の発表が今後の業績予想や株価を変動させるような新材料になる可能性は低そうだ。
楽天が堅調、TBS株の買い取り請求に「焦点は現金化のタイミング」

という見解もありますが、法人株主である楽天としては、株式を市場で売却するのではなく、株式買取請求権を行使する方が税務上有利であると考えられるので、このニュースが材料になり得ると思います。
この点、昨年12月7日のエントリーで詳述しましたので、興味がある方はご覧になってください(https://cfonews.exblog.jp/9226176

TBSは放送法上の認定持ち株会社への移行臨時株主総会で決定したが、楽天は持ち株会社へのへの移行に反対し、株式の買い取り請求権を獲得した。会社法の規定では合併などの組織再編について反対した株主は株式を「公正な価格」で買い取らせる権利を持つ
(日本経済新聞2009年4月1日3面)

次の関心は、この「公正な価格」がどのような金額になるか、という点に移ります。

株主が適法に株式買取請求をしたときは、会社に、その株式を公正な価格(会社法116条1項)で買い取るべき義務が生ずる。
買取価格の決定について、株主と会社との間に協議が調ったときは、会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない(会社法 117条1項・4項。会社法470条1項・786条1項・798条1項・807条1項も同じ)。効力発生日から30日以内にその協議が調わないときは、株主または会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる(会社法117条2項・868条1項・870条 4号・872条4号。会社法470条2項・786条2項・798条2項・807条2項も同じ)。
(江頭憲治郎『株式会社法第2版』有斐閣756ページ)

これは旧商法が「合併等がなければ当該株式が有していたであろう価格」としていたのと異なり、「公正な価格」はシナジーも反映したものでなければならないという趣旨であると解されています。

しかし本件の場合には、持ち株会社への移行そのものに反対しているので、シナジーの配分は不要で、買取価格は,組織再編がなされる前の株価を基準にすることで足りると考えるべきでしょう。

それでは、いつの時点の株価が「公正な価格」として適当なのでしょうか?

組織再編公表後の株価には、シナジー(マイナスのシナジー?)が反映されていることを勘案すると、公表前日(9/10)の株価1,785円を採用すべきであるという考え方もあり得ると思います。

TBSは株主代表訴訟などのリスクを避けるため、買い取り価格の決定を裁判所に委ねる可能性がある
(日本経済新聞2009年4月1日3面)

この辺りも含めて司法の判断が欲しいところです。

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