海外子会社の配当課税撤廃

海外子会社からの配当を実質非課税とする税制の改正の影響で、上場企業の2009年3月期の最終損益が押し上げられる可能性が出てきた。将来の課税を前提に計上していた引き当てが不要になり、一時的な利益が発生するためだ。引当額はトヨタ自動車が6000億円、ソニーが900億円にのぼり、業績が悪化する国際企業に思わぬ埋蔵金が生まれた格好だ。
(日本経済新聞2009年4月2日1面)

【CFOならこう読む】

税制改正の内容は次の通りです。

「1 外国子会社配当益金不算入制度の導入
(1) 間接外国税額控除制度は、所要の経過措置等を講じた上、廃止することとし、内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととする制度を導入する。
(注1)上記の「外国子会社」とは、内国法人が外国法人の発行済株式等の25%以上の株式等を、配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き直接に有している場合のその外国法人をいう。なお、外国法人の所得に課された外国法人税を内国法人の納付する法人税から控除する旨を定める租税条約の規定により内国法人の外国法人に対する持株割合について異なる割合が定められている場合には、本制度の対象となる外国子会社の判定は、その割合により行うこととする。
(注2)本制度の適用については、確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載するとともに、一定の書類の保存を要することとする。
(注3)上記の改正は、内国法人の平成21年4月1日以後に開始する事業年度において受ける外国子会社からの配当等の額について適用する。
(2) 内国法人が外国子会社から受ける配当等の額につき益金不算入とする際、その配当等の額の5%に相当する金額を、その配当等の額から控除する。また、その配当等の額に対して課される外国源泉税等の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととするとともに、外国税額控除の対象としないこととする。
(注)上記の改正は、内国法人の平成21年4月1日以後に開始する事業年度において受ける外国子会社からの配当等について適用する。」
財務省 税制ホームページ

今日の新聞記事にある引当というのは、会計上繰延税金負債に計上されます。
具体的には、海外子会社が利益を計上すると、その未分配利益について会計上将来の配当課税相当分だけ費用を認識するため、以下の仕訳が行われるのです。

法人税等調整額(P/L) ×× / 繰延税金負債(B/S) ××

ところが今回の税制改正で、この分の課税がほぼなくなるので、過去計上してきた繰延税金負債を取り崩す必要があるのです。但しこの取り崩しは法人税等調整額の項目で行われるため、税引前利益までの各利益に与える影響はありません。

海外の未分配利益にかかる繰延税金負債の金額が大きい企業は次の通りです。

20090402

この繰延税金負債の金額は、有価証券報告書の財務諸表の注記、「繰延税金資産および負債の主な内訳」に記載があります(例えば、キヤノンの2008年度有価証券報告書84ページを参照してください)。

【リンク】

「第108期 有価証券報告書」キヤノン株式会社[PDF]