ABCマート、Uアローズ株23%取得

靴専門店のエービーシーマートは3日、衣料品専門店ユナイテッドアローズの発行済株式の23.3%を取得し筆頭株主となったと発表した。Uアローズの商品企画力を靴の開発に生かす考えで、「株を買い増す計画は当面ない」という。Uアローズには25%で発動する買収防衛策があり、エービーシーの出方次第で緊張が高まりそうだ。
(日本経済新聞2009年6月4日 10面)

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両社ともなじみの深い会社で、国富の観点からあるべき敵対的買収ルールを考える上で良いケースとなりそうです。

Uアローズは、高感度なファッションアイテムを揃え、情報発信を行うセレクトショップの最大手として、消費者のみでなくファッション業界へも大きな影響力を持 つ企業として成長を続けている会社です。

一方ABCマートは低価格の靴小売店を展開する会社で、ここ10年で大きく成長している会社です。

「業績ではエービーシーがUアローズを圧倒している。Uアローズの2009年3月期は3期連続の経常減益で、株価は3年前の約3分の1。一方のエービーシーは2009年2月期の連結純利益が最高を更新するなど絶好調で、Uアローズ株を買い増しやすい環境にある」(前掲紙)

ABCマートがUアローズの商品企画力を欲するのは理解できます。

「ただUアローズはファッション感度の鋭い高級衣料品として知られる。低価格品が中心のエービーシーとは客層が異なり、Uアローズの内部には困惑も広がっている」(前掲紙)

ABCマートが資本の論理を振り回し、力ずくで買収するようなことがあれば、困惑が拒絶に変わるように思います。下手をすればUアローズの価値の源泉であるヒトの多くが辞めてしまい、単なるハコを買うことにもなりかねません。そう考えると、売り手にとっても買い手にとってもこのM&Aは価値を生まないように思えます。

しかし、ABCマートの経営陣が大きなプレミアムをつけてUアローズにTOBをかけるというような愚行に出た場合、ABCマートの株主がこれを止めるのは非常に困難です。一方、Uアローズの一般投資家の多くはTOBに応募するでしょう。

つまり、国富の観点から見ると行われるべきでないM&Aが実行されることになるのです。それでもUアローズはABCマートが濫用的買収者であるとして買収防衛策を発動することは許されません。ABCマートは濫用的買収者ではないからです。

だから新たな買収防衛ルールを僕たちは必要としているのか、そうであるならそれはどのようなものであるのか、それを僕たちは考えなければならないのです。

ここまで書いて今日は時間が来てしまいました。
この続きは、この案件の進展に合わせてまた書きたいと思います。

余談ですが、僕の家の近所の海の真ん前にABCマートが新店を数年前に出店しました。僕にはそれがとても場違いに感じました。今はもうその店はありません。

ABCマートはABCマートでない別の何かになりたいと思っているのかもしれませんね。

【リンク】

2009年6月3日 「株式会社ユナイテッドアローズの株式の取得に関するお知らせ」株式会社エービーシー・マート[PDF]