TBS持株会社化承認 楽天買い取り請求権行使か?

TBS持ち株会社化、承認 楽天の経営掌握、難しく

TBSが16日都内で開いた臨時株主総会で、来年4月1日付で放送法上の認定放送持ち株会社「東京放送ホールディングス」に移行する議案が株主に承認された。1つの株主が議決権を33%までしか保有できない出資制限があり、筆頭株主の楽天が単独でTBSの経営支配権を握る可能性はなくなった。今後の焦点は楽天がTBS株の買い取り請求権を行使するかなどに移る。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081217AT1D160AV16122008.html

【CFOならこう読む】

新聞記事は次の3つのシナリオを想定しています。

シナリオ1 株価低迷で膠着状態続く
「楽天は1株当たり約3100円でTBS株式を取得しており、仮に16日終値の1330円で保有全株を売却すると650億円超の損失が確定してしまうからだ。」シナリオ2 株価回復 買取請求権行使へ
「仮に株価が2000円まで回復すれば、楽天が権利行使に動くとの観測もある。買取請求権の行使は市場で売却する場合に比べ税務上の扱いが有利になる。TBS側は買取を拒否できないため、和解スキームとしてまとまりやすい面もある。」

シナリオ3 三木谷社長変心 和解へ急転
(2008年12月17日 日本経済新聞 12面)

法人株主にとっては、株式を市場で売却するのではなく、株式買取請求権を行使する方が税務上有利な場合があるので、スクィーズ・アウトの場面で少数株主がスクィーズ・アウトに応じずに、株式買取請求権を行使するインセンティブが働く可能性について、各方面から指摘があるところです(例えば「シティグループと日興コーディアルグループによる三角株式交換等の概要(下)」 谷川達也・水島淳 商事法務
1833)。

株式買取請求権を行使し、会社が株式を買い取ると、自己株取得になります。税務上、自己株取得の場合、取得対価のうち、取得会社の「1株当たり資本等の金額」を上回る金額が「みなし配当」とされ、「1株当たり資本等の金額」と株主の譲渡原価との差額が株式譲渡損益となります。

したがって、

「対象会社の税務上の資本金等の額、内国法人株主の保有する対象会社株式の売買価格やその簿価等にもよるが、公開買付けへの応募や組織再編において受領した対価の売却を行い、その際の売却価格とその簿価の差額との全額につき株式譲渡損益として課税を受けるより、売買価格の一部が配当等の額(その全部または一部は益金不算入となる)とみなされ(法人税法24条参照)、その分、株式譲渡益が減少する(株式譲
渡損が増加する)可能性がある対象会社による現金での株式取得のほうが、内国法人株主にとって税務上のメリットが大きい場合多いであろう」(谷川・水島 前掲)

ということになるのです。

楽天のケースで、1330円で市場で売却、1330円でTBSが株式買取、2000円でTBSが株式買取、の3つのシナリオについて損益に与える影響を下の表で計算してみました(あくまで概算です)。

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楽天の連結ベースの第3四半期純利益は134億円。2000円程度まで株価が回復すれば損益へのインパクトを何とか当期純利益の中で吸収できる可能性があります。「株価が2000円まで回復すれば、楽天が権利行使に動くとの観測」というのは、恐らくこういうことを言っているのだと思います。

【リンク】

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